パーシヴァル [ Perceval ]

年末になると何故かN○KFMで楽劇「パルシファル」を放送しますね・・・どうでもいいけど。
聖なるおバカさん。円卓の中で、きわめて優れた騎士の一人として賛えられる彼も、最初はなんだかスゴかった。

パーシヴァルには父と二人の兄がいたが、騎士であった彼らは戦争で命を落とした。それを悲しんだ母は、パーシヴァルだけは騎士にさせまいと、彼を森の奥に連れていった。そして、騎士が何であるかも、剣の扱いも、馬の乗り方さえ教えずに育てた。
が、親の心子知らず。ある日、一人の騎士が森の中を通っていった。パーシヴァルは母に何であったのかを尋ねるが、母は「あれは天使様です」とウソをつく。そして翌日、くだんの騎士を探してやってきた騎士達に会ったパーシヴァルは、彼等に最初の騎士の情報を与える代わりに、騎士とはどういうものであるのか、彼らの持つ武具の名前などを教えてもたったのだった。
そこですっかり騎士になりたくなったパーシヴァル。あまりの事に気絶した母には目もくれず、さっそく騎士装束(もちろん大間違い。)に身を固める。ショックから立ち直った母は息子に騎士の心得を説き、アーサー王の宮殿に行くように助言するのであった。
さて、意気揚々と宮廷に出向いたはいいが、はっきり言っておのぼりさんなパーシヴァル。ロクな武具も無く、裸馬にまたがった彼を宮廷の者たちはさんざんバカにした。

ところが、今まで一度も笑ったことがなく、騎士道の華といえる騎士が現われるまでは笑顔を見せないと言われていた乙女が、パーシヴァルを見て笑みを浮かべ、「この人こそ真の騎士の華となるべきお方です」と言った。
こんなイナカモンに・・・と腹を立てた執事・ケイ卿は乙女の横っつらをしたたかに打ったので、彼女は床に倒れ伏した。オトナゲないなあ、もう。

この仕打ちに腹を立てたパーシヴァル。なにがなんでも騎士として認めてもらおうとするが、「乱暴者の騎士を倒して、彼の武具を奪ってこれたら騎士として認めてやろう」なんて言われる。よし、やったろうやんけ!とばかりに騎士を追いかけたパーシヴァルは、なんと引っこ抜いた木を武器に、見事その騎士を倒してしまう。
しかし一向に戻ってこないパーシヴァルの事を「まさか、死んじゃったんじゃ?」「いやもう絶対死んでるってば」「アイツはすげえ強い騎士だったんだよ。あんなイナカモンが倒せるわけないじゃん。かわいそうな事しちゃったよな」なんて噂しあう宮廷の騎士達だったが、実は・・・。
生死を確かめに来た騎士は、死んだ騎士の武具をはがしたはいいものの、どうやって着たらいいのかわからなくて四苦八苦しているパーシヴァルを発見するのであった。ちゃんちゃん。

かくして騎士になる資格を得たパーシヴァルだったが、「あの背の高い人(ケイ卿のこと)に一矢報いるまでは王宮には戻りません!」と迎えの騎士を断わったパーシヴァルは、着せてもらった鎧姿で、あてのない旅に出るのでした。
旅先で、彼の伯父にあたる「ペシュール(罪人)」王に会ったパーシヴァル。実は王はかつてキリストの血を受けた聖杯と、体を貫いた聖槍を守護する者だった。
「私が説明しないものにかんしては質問してはならない」。
ペシュールにそう申し渡されたパーシヴァル。のちに多くの騎士が、命を落とすほどの大がかりな探索に出かけることになる聖杯を目にしながらも、それが何なのか、黙秘を決め込んだ王に尋ねることができなかったのだった。
さて、すったもんだの末ケイとも和解できたパーシヴァルはアーサー王に正式に騎士として迎えられ、円卓の騎士すべてを巻き込むことになる聖杯の探索に出かけることになる。そして、純粋にして敬虔な神の信徒であるパーシヴァルは、その清らかな心を認められ、ボールス卿(ランスロットの従兄弟ね)、貴公子ガラハド卿とともに真の聖杯の姿を目にすることになるのであった。

って、聖杯探索の元祖ヒーローなパーシヴァルなんですが、マロリー版(他のもけっこう・・・)ではランスロットの息子、ガラハドくんにお株を取られてしまっております。

さて、探索を成就させたガラハドくんが自ら望んで神に召された後は、ショックと悲しみのあまり僧籍に入り、2年の精進生活の末にボールス卿が見守る中静かに息を引き取るパーシヴァルでした。実は繊細だったりするのね。
パーシヴァルの遺体は、探索の旅の途中、ある町の女主人の身代わりとして犠牲になった彼の妹の傍に葬られ、ボールス卿はそれを見届けた後に王宮へ帰り、事の顛末を王達に告げたのでした。しみじみ・・・。

とにかくパーシヴァルの取り柄っていったら、「純真無垢」。言い方を変えれば「人がいい」これにつきる!と思います。ちょっぴり頭悪そう(失礼)だけど、ハートはあったかいのさ!ってか・・・。

Posted by 鰯野三和土