モウドレッド(別名:モルドレット) [ Mourdred ]
アーサーがそれと知らずに関係を持ってしまった異父姉・モルゴースとの間に生まれた不義の子。アーサー王の甥であり同時に息子でもあり・・・アーサーを死にいたらしめたダークヒーローくん。「良い子悪い子普通の子」なら、間違いなくワルオくん(古いぞ)。
ちなみに、母、モルゴースが夫であるロット王との間にもうけたガウェイン[Gawein]は異父兄にあたる。兄弟仲は良くなかったらしい。すぐ上の兄、アグラヴェインとは仲良しさん。性格が悪いモン同士で気があったようだ(^^;)。
その根性はさながら日光のいろは坂のように曲がりくねり、病院坂の首くくりの木のごとくねじまがりまくり、闇夜のカラス以上にまっ黒けである。告げ口と卑劣な策略を巡らせるのが大好きらしい。まあ、生い立ちからいって歪まない方が不思議だけど。
なにしろ、姉・モルゴースとアヤマチをおかしてしまった後、予言の力で真実を悟ったマーリン[Merlin]に「あなたはご自分の罪によって滅びることになる」と宣告されたアーサーは、その年に生まれた子供全てをかき集め、海に流してしまうことにしたのだ。なにもモウドレッド一人を殺すのに、イエス・キリストを抹殺しようとしたヘロデ王なみの暴虐をせんでも・・・とは誰しもが思うだろうがそこはそれ、モウドレッド一人を名指ししたら、自分の罪を白状するようなモンでございます。
てなコトでそのような思いきった手段に踏み出したワケですが・・・はっきり言って、周囲にはバレバレだったりして。意味ないね〜。
それはともかく、ログレス中の赤ん坊が泣き叫ぶ母親の手から奪われ、集められて、海に捨てられたワケですが、憎まれっ子世にはばかるとはよく言ったもの。
モウドレッドだけはとある修道院の建つ海岸に流れ付き、修道僧の手で育てられ、やがて騎士としてアーサー宮廷に仕えることになるのでした。
その後、どういうわけだかモウドレッドの素性を悟った人々は彼にそれなりの敬意を持って接するワケですが、モルゴースとロット王の息子達、ガウェイン、ガレス、ガヘリス、アグラヴェインは単に彼を弟として扱うのみ。そりゃそうだ。
しかし、彼の根性の悪さが露呈するにつれ、清廉潔白なお兄ちゃん達はモウドレッドを煙たがるようになる。が、類は友を呼ぶのか、底意地の悪いアグラヴェイン兄ちゃんのみはモウドレッドと意気投合。騎士の中の騎士とか呼ばれてる目の上のタンコブ、ランスロットをどうにか陥れてやろうと画策を始めるワケです。
ランスロットの一番のウィークポイントといえば、王妃グィネビアとの密通。これをチクらずしてどうする!いや、チクるが勝ちだ!
そう考えたモウドレッド、アグラ(以下略)と一緒に「王もお気の毒にね〜、自分の奥さんがやってることも知らないなんてね〜」とやいのやいのと騒ぎ立て・・・最初は耳を貸さなかった王も、もはや城中の大評判になってしまっている噂の人を放っておくわけにもいかず・・・悪い2人に全てを任せてしまうのでした。
そこでモウドとアグラは密会中のランスロットに襲撃をかけるのですが、強いぞ僕らのランスロット!がそんな事でやられるわきゃない。素肌の上にはシャツ一枚(何してたんだか・・・)の軽装であっても、アグラヴェインを返り討ち、窓からとっとと逃げて自分の領地に帰りました。
ここまで騒ぎがでかくなってしまった以上、アーサーも「いいじゃん、なかった事にしちゃえば☆」なんてマネはできないワケで。
で、グィネヴィアを火刑にしようとしたとこでランスロットが救い出しに来て、事態は悲劇へと突き進んでいくんですな〜。詳しくは「ランスロット」参照!
ともかく、他の善人なお兄ちゃんたちが全員死んでもまだ生きてやがる憎まれっ子モウドレッド。
アーサーは遠征に出る間、キャメロットを仕切るのをモウドに任せていたワケですが、これが大きなミステイク。
鬼の居ぬ間のなんとやら、ランスロットとの停戦時期に城に戻っていたグィネヴィアと結婚して、自分がログレス王国の王様になるんでい!ってな策略を実行に移します。ところがぎっちょん、グィネヴィアもおとなしく従うタマじゃない。塔に立て篭って抵抗をいたします。そうこうする内に謀反の知らせを受けたアーサーがすっとび帰って、内乱が勃発しちまうワケですな。
てなワケで紆余曲折あるんだけど、結局彼はアーサーと相討ち。マーリンの予言した「貴方は貴方の罪(キンシンソーカンね)によって身を滅ぼす」っていうのが的中しちゃったワケです。
思えば彼も、存在自体が罪とされ生まれてすぐに実の父親の命令によって殺されようとし、それでも思い切って名乗りを上げてみれば、王子であるにも関わらず公式の席では一家臣としてしか扱われない。
そんでもって腹違いの清廉潔白にして成績優秀な近所(近隣諸国)でも大評判のデキのおよろしい兄たちと継父ロット王には疎まれ、せめて騎士としての力を示そうにも頭上にはランスロットという越えられない壁がドカンと立ちはだかり・・・ヒネくれるのも当然なわけで。けっこうかわいそうな人でした。