湖のランスロット [ Lancerot de lake ]

アーサー王宮一の色男にして第一の家臣。その性質は誠実にして優しく、勇猛果敢にして礼儀正しく、まさに騎士の鑑。しかして、アーサーの破滅の一因となる。

ベンウィック王バンの嫡子。つまりはおフランスの王子様。父のバンはアーサーの同盟者であったが、自国における戦いの中、力及ばずアーサーの助力を得ようと落ちのびる次第となった。途中、焼け落ちる城の煙を目にして悲嘆のあまり亡くなったバン・・・えらい神経の細い王様ですな・・・。残された王妃ヘレンは途方にくれつつもランスロットを連れて逃げよう、としたところが湖のほとりに置いていたはずの息子が見えない。ありゃりゃ、と見れば怪しい妖精が息子を抱えて湖に飛び込んでしまったじゃあーりませんか。失意のヘレンは尼寺に入り、そこで兄の死を知って悲しみのあまり亡くなってしまったバンの弟、ボールス王の王妃と一緒に念仏三昧の日々を送る事になったのでした。ちゃんちゃん。

とにかくパーシヴァルの取り柄っていったら、「純真無垢」。言い方を変えれば「人がいい」これにつきる!と思います。ちょっぴり頭悪そう(失礼)だけど、ハートはあったかいのさ!ってか・・・。

一方、怪しい美女(ポイント)にさらわれたランスロットはといえば、湖(実は蜃気楼)の底の壮麗な宮殿で、猟犬に変身させられて連れて来られたボールス王の息子たち(要は従兄弟。ボールスJr.とライオネル)と再会し、みんなでくだんの美女・・・もとい、湖の城の女主人、ニムエ姫(ヴィヴィアンとも呼ばれる)に育てられることになった。ここからランスロットは「湖の騎士」と呼ばれるのである。

かくして18歳になった日についに宮廷デビューすることになったランスロットだったが、湖の姫のお墨付、しかもすこぶるつきの美形だってんで満場一致で騎士として認められた。・・・それでいいんか!?これを美形は得をする法則、と呼ぶ。

そして、一目出会ったその日から、恋の花咲くこともある。ランスロットが宮廷に現われたその時、アーサーの奥方グィネビアとお互いに一目惚れ・・・してしまった事が、ランスロットのその後の人生を決定づけてしまったのであった。

とにかくその後はアーサーの為、というか王妃様のために戦いまくるランスロット。いぢわるな誤解からグィネビアに罵倒されてもめげない。彼女の危機には必ず駆けつけ、自分の身の危険も顧みずに救出に奮闘するその姿はもはや単なる不倫野郎の域を越え、いっそすがすがしいほど。王妃への愛を隠そうともしないランスロットの態度が宮廷中に知れ渡るには時間がかからなかったが、なぜかアーサーは蚊帳の外。知らぬは亭主ばかりなり・・・・。
なお、当然ながら身内にはウケが悪く、ランスロットを救世主と崇める一族の者は王妃を嫌いまくっていた。でもランスロット様のお気に入りだから・・・と助けてやったりするその姿には落涙を誘う何かがある。

凛々しく、強く、かつ聡明で礼儀正しくおまけに美形なランスロットはモテる。とにかく、モテる。男にもモテる。(「男が男に惚れる」というヤツである。間違っても変な意味ではないぞ。抱きあってキスしててもそれは友情なのだ。・・・ホントだってば)しかし彼が愛を捧げる女性はグィネビア様のみ。つれなさに泣いた女は数知れず、焦がれ死にまでしてしまった乙女までいるほど。が、魔女の妖術の力を借りてとはいえ、ランスロットをモノにしてしまったお嬢様がいたりする。ペレス王の娘エレイン姫その人である。ガッツだ。

当然ランスロットはわめくは怒るは大騒ぎしたが、エレインが若くて可愛くて未通だったので許してしまったりする。男なんてっ(笑)。そしてその時、エレイン姫のお腹の中には並み居る騎士の中でただ一人、聖杯探究を成功させることになるガラハド卿が宿っていたのだった。

コレがグィネビアにバレないワケがない。すったもんだの末、アーサー王の宮廷に快く迎えられた(若干一名には嫉妬の視線で迎えられたわけだが)エレインはまたしても魔法の力でランスロットと一夜を明かす。ランスロットが大声で寝言を言うもんだから隣の部屋に陣取っていた王妃に丸聞こえ。かくして怒り狂った王妃に激しく罵られたランスロットは狂気にかられて飛び出していってしまう。・・・フツー、ここまでされてまだその女を好きでいられるモノだろうか?まあそれはともかく、いろいろあってエレインの介抱と聖杯の功徳で正気を取り戻したランスロットは「シュバリエ・マル・フェ(罪人の騎士)」と名乗りエレインの領地で暮らすことになったが、毎日一度はアーサーのいるログレスの方向を見て涙にむせぶ日々であった。

とまあ、そこへタイミングよくやってきた円卓の騎士と実弟エクトルのおかげで王妃の危機を知り、見事救ってみせたランスロットにグィネビア大感激。よせばいいのに元のサヤに収まる2人。なんだかなあ。

そして、この二人の恋が原因となって円卓の騎士はランスロット一族+ファンの皆様、アーサー王シンパの真っ二つに分かれて争うことになり、そこへまた甥(実は息子)の裏切りが重なってアーサーは命を落とすことになる。・・・たかが不倫、されど不倫。たいへんである。
もともとアーサーに弓を引く事を極端に嫌がり、しぶしぶ戦っていたものの、深く責任を感じたランスロットは号泣し、修道院に入った王妃を探し当てる。しかしグィネビアは自分たちのせいで立派な騎士であった王が亡くなったのだから、自分の国に帰ってお妃でももらいなさい、とランスロットを追い返すのであった。しかしランスロットにそんなことはできない。かくしてランスロットも陰者の庵にて6年間の祈りの日々を送り、王妃の死の知らせを受けてその亡骸を王の傍に埋葬したあと、飲まず食わずで六週間後に静かに息を引き取ったのであった。

愛に生き、愛に死んだ騎士の中の騎士。・・・不倫野郎だけど・・・。

Posted by 鰯野三和土